2022.01.05 / 相続対策パターン

不動産を相続した場合の遺産分割方法には、主に以下の3種類があります。
・現物分割
・代償分割
・換価分割
上記以外に「共有」にする方法もありますが、あまりおすすめではありません。

今回は不動産の遺産分割方法やそれぞれのメリット・デメリットをお伝えしますので、実家やマンションなどを相続した方は是非参考にしてみてください。

1.現物分割とは?メリットとデメリット

現物分割とは、不動産を「そのまま」分ける遺産分割方法です。

たとえば実家の土地建物と預金が遺されて子ども2人(長男と次男)が相続人になる場合、長男が実家を引き継いで次男が預金を相続すると現物分割となります。

土地の場合には「分筆」して複数の筆数に分け、それぞれの相続人が分筆後の土地を相続することも可能です。

メリット

現物分割のメリットは、手続きが簡単な点にあります。

単純にそのまま不動産を引き継ぐだけで済むので、複雑な評価や売却などの対応は不要です。

デメリット

現物分割のデメリットは不公平になりやすい点です。

不動産をもらえる相続人は良いですが、その他の相続人は遺産を受け取れなかったり、受け取れても少なくなることもあるため、他の相続人が不満を持ち、現物分割できないケースも多々あります。

土地を分筆する際にも注意が必要です。分筆できない土地もありますし、分筆によって価値が低下してしまうケースも少なくありません。

2.代償分割とは?メリットとデメリット

代償分割は、不動産を特定の相続人が受け取る代わりに、他の相続人へ代償金を払って清算する遺産分割方法です。

たとえば3,000万円の価値のある不動産が遺されて長男と次男と長女が相続人になる場合、長男が不動産を受け取って次男と長女へそれぞれ1,000万円(法定相続分に応じた金額)を支払うと代償分割になります。

メリット

代償分割のメリットは、公平に遺産分割しやすい点にあります。

1人の相続人が不動産を受け取るだけではなく、他の相続人へきちんと代償金を払うので、他の相続人も納得しやすくなり、不動産という資産を手元に残せるメリットもあります。

デメリット

・評価額が問題になりやすい

代償分割のデメリットの1つ目は、不動産の評価額が問題になりやすい点です。

不動産にはさまざまな評価方法があり、時価も一定ではありません。

代償金を払う相続人は評価額を少なめに見積もるのに対し、代償金を受け取る相続人は評価額を多めに見積もる傾向が強くなります。

意見が合わないと遺産分割協議が成立せず、トラブルが長引いてしまうリスクが高まります。

・代償金を払う資力が必要

代償分割するには、不動産を受け取る相続人に代償金を払う資力が必要です。

支払いができないなら代償分割は選択できません。

一括で支払えないなら分割払いも可能ですが、分割払いにすると途中で支払われなくなるリスクも発生します。

3.換価分割とは?メリットとデメリット

換価分割とは、不動産を売却して売却金から経費を差し引き、相続人同士で分け合う遺産分割方法です。

たとえば3,000万円の不動産があって長女、次女、三女が相続人になる場合、不動産を売って経費を引いて清算すると換価分割となります。

メリット

・公平に遺産分割できる

換価分割には、公平に不動産を分割できるメリットがあります。

売却金から経費を差し引いて金銭的に法定相続分に応じて清算するので、代償分割のように評価方法の問題も発生しません。

・不要な不動産を処分できる

田舎の実家を相続した場合など、不動産が不要で「相続したくない」と考える方も多数おられます。実際、不動産を所有していると固定資産税や管理費もかかります。

換価分割で売却したら、不動産を所有するコストもかからなくなるメリットがあります。

・現金が入ってくる

換価分割すると、現金が手元に入ってきます。相続税が高額になった場合、支払いに充てることも可能です。

デメリット

不動産を売却してしまったら、資産がなくなります。賃貸収入は得られませんし、将来の値上がり益も得られません。

ただ不要な不動産を所有し続けていると出費も増えるので、住んでおらず活用もしていないなら換価分割するのが良いかもしれません。

4.相続不動産の共有をおすすめしない理由

遺産分割時、不動産を共有にするのはおすすめできません。共有不動産は1人1人が自由に処分、活用できず不便だからです。

使用や保存行為以外は他の共有者の同意が必要となるので、結局活用もできず放置されてしまうケースが多々あります。将来的に共有物分割請求などの訴訟が起こってトラブルになってしまう事例も少なくありません。

相続した不動産は多くの場合、共有以外の方法で遺産分割するのが望ましいと言えます。