2022.07.15 / 相続対策パターン

相続人に海外居住の方が含まれている場合国内の相続人ばかりのケースとは異なる対応が必要となります。日本に住民票がない場合「印鑑登録証明書」「実印」「住民票」を用意できないためです。

今回は海外居住の相続人がいる場合にどのようにして遺産分割協議を進めれば良いのか、解説します。海外生活が長く住民票を抜いている相続人の方、現地国に帰化してしまった方などはぜひ参考にしてみてください。

1.住民票がないと相続の必要書類を入手できない

国際結婚や現地での就職などで海外居住している場合、日本に住民票を残していない方が多くいらっしゃいます。その場合、以下のような相続に必要な書類を入手できません。

1-1.印鑑登録証明書と実印

印鑑登録証明書は、遺産分割協議書に添付する必要があります。また遺産分割協議書には実印で押印しなければなりません。そうしないと不動産の相続登記ができませんし、金融機関でも預金の払い戻しに応じてくれないケースが多いためです。

印鑑登録証明書は居住地の役所で発行してもらいます。住民票と連動しているので、住民票のない方は実印の登録ができず印鑑登録証明書も発行できません。

1-2.住民票

住民票は、不動産の相続登記の際に必要ですし、その他にも各場面で必要となる可能性がある書面です。

日本での住民登録を抹消していたら、住民票も用意できません。

1-3.戸籍謄本

不動産の相続登記の際など、相続人自身の戸籍謄本が必要となるケースもあります。日本国籍を抜いていたら戸籍もなくなってしまうので、謄本を取得できません。

海外居住の相続人が遺産相続する際には、上記に代わるものを用意する必要があります。

2.サイン証明書とは

海外居住で日本国籍のある人の場合、「サイン証明書」を取得すれば実印や印鑑登録証明書に代えられます。

サイン証明書とは、海外の領事に「本人の署名であることに間違いない」と確認してもらう証明書です。署名証明書ともよばれます。

本人が遺産分割協議書に署名を行ってサイン証明書をつけておけば、実印や印鑑登録証明書と同様の効果があります。相続登記の際にも使えますし、金融機関での預金払い戻しなどの手続きにも応じてもらえます。

海外居住で住民票を抜いている相続人の方は、現地でサイン証明書を取得してください。

3.サイン証明書の取得方法

サイン証明書が必要な場合には、海外居住の相続人本人が現地の領事館へ行かなければなりません。その上で領事の目の前でサインを行い、サイン証明書をつけてもらいます。

代理人による申請はできず、必ず本人が行かなければなりません。

なお領事館が遠方のケースや体調不良などでどうしても行けない場合、公証人にサイン証明書の作成を依頼できる可能性もあります。

4.住民票の代わりに使う「在留証明書」

海外居住の場合、日本での住民票も取得できません。
代替書類として「在留証明書」を取得しましょう。

在留証明書とは、領事が「この国のこの場所に居住しています」と証明してくれる書類です。

在留証明書もサイン証明書と同様に、本人が在外公館へ行って取得しなければなりません。サイン証明書を入手する際に一緒に申請することをおすすめします。

5.帰化している場合には「宣誓供述書」

現地に帰化している方の場合には、サイン証明書や在留証明書も取得できません。
帰化すると日本人ではなくなってしまうからです。

在外公館におけるサイン証明や在留証明は「日本人のための制度」なので、国籍を失った「元日本人」には適用されません。

帰化した相続人の場合には、「宣誓供述書」を用意しましょう。宣誓供述書とは、さまざまな事項について宣誓を行った上で話した内容を書面にまとめたものです。公証人に作成を依頼して作成してもらいます。

サインや在留など必要事項についてまとめて宣誓供述書を作成すれば、遺産相続の手続きに使えます。

6.海外居住の相続人が不動産を引き継いだ場合の対処方法

海外居住の相続人の場合、国内の遺産に関心のない方もおられます。相続しても管理が負担になり放置してしまったり、もてあましてしまいがちです。

また海外居住であっても国内に不動産を所有していれば、毎年固定資産税を払わなければなりません。自分で管理できないので、業者に依頼しなければならずさらにコストがかかります。

海外居住であるにもかかわらず日本国内で不要な不動産を引き継いでしまったら、早めに売却したほうがメリットといえます。

売却すれば管理の手間は発生しませんし、これ以上無駄な費用を負担する必要もありません。相続物件の売却の際には譲渡所得税の控除制度を適用できるケースもよくあります。

ただし相続した不動産の売却を成功させるには、税金や相続に関する知識が必要です。相続に力を入れている不動産会社であれば、有用なアドバイスが可能ですし相続に詳しい専門家のご紹介も可能です。

弊社では海外在住の方からもご相談を受けつけています。お気軽にお問い合わせください。