2025.03.16 / 不動産お役立ち知識

弊社の事務所がある横浜市青葉区内には、今年9月に完成予定の総戸数761戸の大型マンションがあるのですが、すでに「完売御礼」の幕が掛けられ、入居を待つばかりのようです。

ここは青葉台駅から徒歩10分少々の旧桜台マンションの跡地で、元々多棟型の大きなマンションでしたが、全国でも数少ない❝建て替え❞を実現できたマンションです。

今月4日に、 「老朽化マンション等の管理及び再生の円滑化等を図るための建物の区分所有等に関する法律等の一部を改正する法律案」 が閣議決定されました。日本では最初に建設された1956年から現在に至るまでに、およそ700万個のマンションが建てられたそうです。そのうち旧耐震の建物は100万個を超えていることから「大きな地震がきたらうちのマンションはどうなるんだろう・・」と心配している方が全国には大勢いると考えられます。

戸建て住宅と違い、個人の決断だけで建て替えるわけにもいかず、お金を払ってでも建て替えてほしいと思う人もいるとは思いますが、「建て替え決議5分の4要件」いわゆる住民の5分の4以上が賛成しないと建て替えが出来ない現行法では非常にハードルが高く、これまでにそこをクリアして建て替えまで漕ぎつけたマンションは、昨年の時点で全国で300件程度だそうです。たったの!!です。これを青葉区のマンションは実行したのですからスゴイことです。

「マンションの管理・再生の円滑化のための改正法案」が今国会で成立すれば、2026年4月1日から施行されることになるそうですが、建て替えだけでなく建物・敷地の一括売却や1棟リノベーションや建物の取り壊し等を、建て替えと同様に「5分の4決議」で可能とするほか、耐震性不足等の条件を満たせば「 4分の3」または「3分の2」へ要件を緩和することになるそうです。

これは画期的!と言いたいところですが、4分の3でも3分の2でも、大変そうですよね・・。 そこに住んでいる人の年齢が高く「あと10年も住めれば十分だ」と考える人もいれば、若い家族世帯は「まだまだこの先3、40年はもってくれなきゃ」と思っている人もいるでしょう。建て替えには仮住まいの費用も含めると一般的に1800~2000万円程度の自己負担額が発生すると言われていますので、そこが大きな問題となります。もし決議で建て替えが決まった場合でも自己資金が無い人は立ち退きすることになりますが、その際は時価で持ち分を売り渡すことになり、その資金で別の場所に移り住むことになります。その際の金額が転居費用として悪くない金額であれば、それも有りと考える人もいるかもしれませんが、それを決めるのは本当に大変なことだと思います。

ただ、採決の取り方もこれまでと変わるようで、集会決議の❝出席者❞の多数決で決めることができる「合意形成に参加している人で決議を行う」ことで管理組合による意思決定の円滑化を図る狙いがあるとのこと。ちゃんと関心を持って参加していかないと今後の人生に誰も責任を取ってくれないのです。

報道発表資料:マンションの管理・再生の円滑化等のための改正法案を閣議決定<br>~新築から再生までのライフサイクル全体を見通した取組~ – 国土交通省

「マンションはいつまで住めるのか?」という問いには専門家でもはっきりとした答えを出せないテーマです。 鉄筋コンクリートのマンションは47年だよね?と言われる方がいますが、これは減価償却費の計算に用いられる時の年数で物理的寿命の基準とは違いますし、耐震補強工事や配管の更生・更新工事等のメンテナンスで寿命も延びるわけですから建て替えだけが永く住めるとは言い切れません。

いくらマンションの建て替え条件が今までより緩和されたとしても、どこまで進むのでしょうね。私たちも築年数が経っているマンションの仲介や再販もしていますし、身近な知り合いや親族も旧耐震の築年数の経ったマンションに住んでいます。非常に関心の高いニュースですから、しっかり見守っていきたいと思います。