2022.02.21 / 相続対策パターン

相続した不動産を売却すると、どのような税金がどの程度かかるのでしょうか
土地建物、マンションなどの不動産を相続しても、活用すると予定がなければ所有している意味がありません 。
管理費用や固定資産税の負担も生じるので、「できれば売却したい」と考える方がも多いと思います。
今回は相続した不動産を売却するときにかかる税金適用できる控除の制度について解説します。

1.相続した不動産売却にかかる税金の種類

相続した不動産を売却すると、以下のような税金がかかる可能性があります。

印紙税

契約書や領収書を作成するときにかかる税金です。不動産売買の際には「売買契約書」に収入印紙を貼って印紙税を払なければなりません。

譲渡所得税と住民税

譲渡所得税とは、不動産を売却して「利益」が出たときにかかる税金です。

譲渡所得税が発生すると、金額に応じて翌年の住民税の金額も上がるので、両者は「セット」でとらえるとよいと思います。

登録免許税

登録免許税は、不動産の登記をする際にかかる税金です。不動産を売却する際に「抵当権」を外す必要があれば、登録免許税を払わなければならない可能性があります。

以下ではそれぞれの税金がどの程度になるのか、個別にみていきましょう。

2.印紙税

不動産の売買にかかる印紙税の金額は以下のとおりです。
現在軽減税率が適用されるので、本則の税率とは異なります。
契約書1通について、以下の金額の収入印紙を貼付しましょう。

契約金額 軽減税率
10万円を超え 50万円以下 200円
50万円を超え 100万円以下 500円
100万円を超え 500万円以下 1千円
500万円を超え1千万円以下 5千円
1千万円を超え5千万円以下 1万円
5千万円を超え 1億円以下 3万円
1億円を超え 5億円以下 6万円
5億円を超え 10億円以下 16万円
10億円を超え 50億円以下 32万円
50億円を超える 48万円

ただし契約書の正本を1部のみ作成し、もう1通をコピーで代用すれば収入印紙を貼る契約書が1通で済み、節税できます。

3.譲渡所得税と住民税

譲渡所得税と住民税は、相続した不動産を売却したときにメインとなってくる税金です。

基本的には「相続した不動産を売って利益が発生したとき」にかかります。

譲渡所得税の計算式

計算式は以下のとおりです。

「譲渡所得税=(売却価額-取得費-譲渡費用-特別控除)×譲渡所得税の税率」

上記の「売却価額-取得費-譲渡費用」を譲渡所得といいます。ここがプラスになったら基本的に譲渡所得税が発生します。

ただし特別控除が適用されると課税対象となる譲渡所得がなくなり、税金を払わずに済む可能性があります。

売却価額

売却金額は一般的に「不動産売買契約書」に記載された不動産の売買代金です。

ただし、買主から別途固定資産税や都市計画税の精算金が支払われる場合、それらの金額を加算します。

取得費

取得費とは、不動産を購入したときにかかった費用です。

基本的には「購入したときの売買代金」に「購入に関する諸費用」を足したものが取得費となります。

諸費用に含まれるのは、登記費用や登録免許税、仲介手数料などが主です。

また建物の場合には、減価償却費を考慮して計算しなければなりません。親が建物を購入したときからの減価償却費を計算しましょう。

取得費が不明な場合、売却価額の5%を取得費とみなして計算します。

なお相続税の申告期限から3年を経過する日までに不動産を売却すると、相続税額の一定金額を取得費に加算できる特例があります。これを「相続財産譲渡時の取得費加算特例」といいます。ただし後にご紹介する「相続した空き家を譲渡した場合の3000万円特別控除」との併用はできません。

譲渡費用

譲渡費用とは、不動産を売却するのにかかった費用です。具体的には不動産会社の仲介手数料や測量費などが該当します。

譲渡所得税率

譲渡所得税と住民税の税率は、不動産の所有期間によって異なります。

売却した年の1月1日において5年以下の場合「短期譲渡所得」となって税率が高くなります。一方、所有期間が5年を超えていれば「長期譲渡所得」となり、税率が低くなります。

また所有期間が10年を超えると軽減特例が適用されるので、さらに税率が下がる可能性があります。

  譲渡所得税 住民税 合計
短期譲渡所得 30.63% 9% 39.63%
長期譲渡所得 15.315% 5% 20.315%
軽減税率 6000万円以下の部分について10.21%、それを超える部分は15.315% 6000万円以下の部分は4%、それを超える部分は5% 6000万円以下の部分は14,21%、超える部分は20.315%

相続した不動産を売却するときの税金の特別控除

相続した不動産を売却する際には、3000万円までの譲渡所得税を控除してもらえる特別控除を適用できる可能性があります。

まず、相続人自身が家に住んでいた場合には「居住用財産を譲渡した場合の3000万円特別控除」の適用対象です。他の要件も満たしていれば、譲渡所得が3000万円以下であれば譲渡所得税を払う必要がありません。

一方、自分がその不動産に住んでいなかった場合には「相続した空き家を譲渡した場合の3000万円特別控除」制度が適用される可能性があります。

被相続人が生前に居住していたなどのいくつかの要件を満たさなければなりませんが、適用できれば3000万円までの譲渡所得が控除されます。

相続した不動産を売却する際には、賢く税制控除制度を適用しましょう。