2022.07.05 / 相続対策パターン

将来の相続を踏まえたとき「節税対策」が非常に重要です。高額な相続税が発生すると相続人にとって負担になり、思ったほど資産を後世代に伝えられなくなってしまいます。

現預金がたくさんある方の場合には生前に不動産を購入すると相続税の節税につながるケースが多数あります。

今回は不動産を生前に購入することによる相続税の節税対策方法をご紹介します。

1.不動産の購入が節税につながる理由

現預金のある方が不動産を購入するとなぜ節税につながるのか、まずは理由をみてみましょう。

  • 不動産の評価額は現預金より低くなる
  • 小規模宅地の特例を使える可能性がある
  • 賃貸するとさらに評価額が下がる
  • ローン額を差し引ける

それぞれについて解説します。

2.不動産の評価額は現預金より低くなる

不動産の購入によって節税できる1つめの理由は、不動産の相続税評価額が時価より低くなることです。現預金を持っているよりも不動産を購入しておいた方が相続税の評価額が下がるので、そこに課税される税額も低額になります。

2-1. 土地の相続税評価方法

土地の場合、相続税路線価または評価倍率という方法で不動産を評価します。
相続税路線価とは、市街地的な場所における道路に面した土地の1平方メートルあたりの単価です。国税庁が全国の相続税路線価を定めていて、毎年1回改定されます。

相続税路線価や評価倍率で評価すると、土地価格は概ね時価の8割程度になります。
現預金がある場合、土地を購入するだけで評価額を2割程度減らすことが可能となるのです。

2-2. 建物の相続税評価方法

建物の場合、土地以上に相続税評価額が下がる可能性があります。
建物の相続税評価は「固定資産評価額」となるためです。

固定資産評価額は不動産のある場所の自治体が定めており3年に1度改定され、時価と比べると約7割程度の金額です。
土地と建物をあわせて買うと、大きく節税できる可能性があります。

3.土地には小規模宅地の特例が適用される

加えて土地には「小規模宅地の特例」という減税制度が適用されるケースもよくあります。

小規模宅地の特例とは、一定の要件を満たす場合において土地の評価額が5割または8割減となる特例です。

たとえば1000万円の土地に8割減の特例が適用されると、土地の評価額は200万円となります。

現預金をそのまま持っているよりも大幅に評価額が下がり、節税メリットが大きいとくなります。

なお小規模宅地の特例の適用要件は、土地の利用状況などの個別要素によって変わってきます。

詳しくは税理士に相談してみるのもよいかもしれません。

4.賃貸するとさらに不動産の評価額が下がる

不動産を購入しても自分では使わない場合、賃貸に出す方も多くいます。

不動産を賃貸すると「借地権割合」や「借家権割合」を差し引けるので、さらに評価額が下がります。

借地権割合とは、土地を借りている人の権利の割合です。全国のエリアによって具体的なパーセンテージが異なり、国税庁が定めています。

借家権割合は全国一律で3割となります(2022年現在)。

たとえば借地権割合が3割の場所で土地を賃貸すると、それだけで土地の評価額を3割下げられるのです。現預金にはこういった制度はありません。不動産ならではの節税方法といえます。

5.ローン額を差し引ける

不動産を購入したりアパートを建築したりする際には、ローンを利用される方が多数です。

被相続人にローンがあると、その分は遺産額から差し引きができます。

たとえば資産が1億円あってもローンが3000万円あれば、遺産は7000万円と評価されるのです。 不動産投資を行う際にローンを設定してこのルールを適用すると遺産全体の評価額が下がるので、さらに節税できる可能性があります。

6.納税資金の準備は必要

確かに不動産を購入すると大きく相続税を節税できる可能性がありますが、注意点も確かめておきましょう。

それは「相続税の納税資金を残しておく必要性」です。

相続税が発生したら、相続人は現金一括で相続税を払わねばなりません。

現預金を残さずすべて不動産の購入費用に充ててしまったら、相続人が相続税を払えない危険が発生します。相続税を払わなかったら税務署から督促が来ますし、ときには高額な延滞税や加算税を課される可能性もあります。

不動産を購入するとしても現預金をすべてつぎこむのではなく、余裕をもった投資を行いましょう。