2022.04.05 / 相続対策パターン

被相続人が借地借家を利用していた場合、相続人としてはどのように対応すれば良いのでしょうか?

借地権借家権相続の対象になります。
遺産分割の方法や相続税との関係などについて、知識をもって相続手続きを進めましょう。
今回は借地権借家権が相続の対象になるのか、相続人としてどのように対応すべきかを解説します。

1.借地権や借家権も相続の対象になる

借地権とは、土地の借主の権利です。他人の土地上に建物を所有している場合に借地権が認められます。

借家権とは、建物の借主の権利です。賃貸物件に居住していたりオフィスや店舗のテナントとして入居していたりする場合に借家権が認められます。

被相続人(お亡くなりになった方)が生前に他人の土地や建物を借りていたら、相続人にその権利や義務が引き継がれます。

相続人が賃料を払わなければならない

借地権や借家権を引き継いだ場合、相続人が地主や家主へ賃料を払わなければなりません。

相続人が複数いて遺産分割協議で誰が借主の地位を引き継ぐか決まるまでは、全員が賃料を法定相続分に従って負担する必要があります。

賃料を払わなければ地主や家主から督促されますし、3か月以上賃料を払わなければ契約を解除されるリスクも高くなります。

相続発生後に借地あるいは借家契約を解約しないなら、遺産分割前であっても賃料の支払いを継続しましょう。

2. 借地権や借家権の承継に地主や家主の承諾は不要

借地権や借家権を相続人が引き継ぐ場合、地主や家主の承諾は不要です。賃料さえ支払っていれば、通知する必要すらありません。

地主や家主の中には「承諾していないので退去してほしい」などと言ってくるケースもありますが、誤った理解にもとづく要求なので応じる必要はありません。

名義変更料の支払いも不要

相続によって借地権や借家権を取得する場合、名義変更料や承諾料などの金銭的な支払いも不要です。

地主や家主が「相続は認めるけれども名義変更料を払ってほしい」と言ってきても、応じる必要はありません。

3.借地権や借家権を相続するときの対応方法

借地権や借家権を相続したら、以下のように対応しましょう。

3-1.借地権の場合、建物の所有名義を変更する

借地権を相続したら、建物の名義変更をしなければなりません。

借地権は土地上に建物を建てて所有する権利なので、相続開始時には建物が被相続人名義となっています。

建物の名義を変更しなければ、相続人は借地権を主張できません。第三者に奪われてしまうリスクも発生します。加えて2024年4月からは相続登記が義務化され、放置しているとペナルティが適用される可能性もあります。

遺産分割協議で借地権、借家権を相続することに決まったら、早めに建物の名義変更をしましょう。

3-2.契約書名義の書き換えについて

相続が発生した時点では不動産の賃貸借契約書が被相続人名義になっています。

法的には書き直す必要はありませんが、わかりやすくするために作り直すか覚書などで訂正すると良いでしょう。

4.借地権を売却したい場合の対処方法

借地権を相続した場合、建物を自分では使わないので「売却したい」と考える方も多数います。その場合の対処方法をみてみましょう。

4-1.地主の承諾を得る

借地権を売却する際には地主の承諾が必要です。許可なく勝手に売ると地主から契約を解除される可能性があります。

相続に関しては地主の承諾が不要ですが売却に関しては承諾が必要なので、間違えないように対応しましょう。地主の承諾を求めると、承諾料を要求されるケースも多く、話し合いによって決定する必要があります。

どうしても承諾してもらえない場合、裁判で承諾に代わる決定をしてもらえる可能性もあります。

4-2.借地権の売却先

借地権の売却先としては、地主が有力な候補者となります。

地主が「土地を返してほしい」と考えている場合、地主へ売却できれば互いの希望が叶えられて手続きもスムーズに進められます。ただし売却価額などの条件交渉が必要であり、合致しなければ売却はできません。

地主が買い取ってくれない場合には、第三者への売却を検討しましょう。個人的に買主を探すのは大変なので、不動産仲介会社へ相談するようおすすめします。

5.借地権や借家権にも相続税がかかる

借地権や借家権にも財産的な価値があるので相続税がかかります。

基本的には「相続税評価額」に「借地権割合」や「借家権割合」を掛け算した金額が相続税評価額となります。

借地権割合はエリアによって異なるので、調べて計算しましょう。借家権割合は全国一律で30%となります(2022年現在)。

借地権の評価額=土地の評価額×借地権割合

借家権の評価額=建物の評価額×借家権割合

相続税が発生する場合、相続発生を知ってから10か月以内に申告と納税をしなければなりません。

ただし基礎控除やその他の控除が適用されて相続税がかからないケースも多数あります。
税金について不明点があれば税理士に相談するとよいでしょう。